レビュー:ヌルヌル動くカートゥーン・アニメとポイントクリックが融合した『ミスター・クーのいろいろ』。常識で考えたら、きっと解けないぞ!

まさん
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、2023年9月7日にMeridiem Games、Astrolabe GamesがNintendo Switch/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/PC(Steam)で配信予定のポイント&クリック・アドベンチャー『The Many Pieces of Mr. Coo(ミスター・クーのいろいろ)』をご紹介します。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

黄金時代のカートゥーンを見るような素晴らしい描き込みのアニメーションに、自分が介入できちゃう!

 『ミスター・クーのいろいろ』は、2Dカートゥーン風の作画を得意とする映画監督・Nacho Rodriguez氏を中心としたスペインのゲーム制作チーム・Gammera Nestが開発。ポイントクリックタイプのパズルとハイクオリティなカートゥーン・アニメーションが合わさったアドベンチャーとなっており、プレイヤーがパズルを解いていくことで物語が進行していきます。

  • ▲主人公のミスター・クー。バラバラにされたり、潰されたり、それでも不死身でピンピンしているのがカートゥーンっぽい。

 ゲームと言うよりも、1つの短編アニメ映画を見ているような躍動感のあるアニメーションが最大の特徴。静止画ではわからないほどに、とにかく細かくキビキビと動く! ヌルヌルと自然現象が再現される! クルクルと表情が変わるし、何が起きるのか、メチャクチャで予想もつかない! アニメというジャンルそのものの「動きで魅せる」楽しさが詰まったアニメーションは、見ているだけでワクワクします。

 木からリンゴが生える流れや、キャラクターの走る動き。何かに追われる。叩いたり、切ったり、驚いたり、生き生きと動き回ったりする。そんなキャラクターを見ているだけでも、なぜ楽しくなってきちゃう作品です。

 物語も、非常にシュールでカートゥーン的な作風。何やらよくわからない生物が出てきたり、食べられたり、バラバラにされたり、潰されたり……。「あるある!」という感じ。グロテスクではなく、あくまでもコミカルに描かれているので痛そうには見えない辺りも、昔のカートゥーン感がありますね。

 子どものころに往年の手描きディズニーアニメや『トムとジェリー』。『バッグス・バニー』などのカートゥーン・アニメを見たことがある人ならクスっとくるはず。このジャンルに初めて触れる人も、手描きで描き込まれたアニメの魅力が伝わると思います。

  • ▲視点も動きもコロコロ変わり、アニメのキャラクターを直接クリックするような感覚に。何が起きるかわからないのも楽しい!

3つのパーツに悪戦苦闘。自分の脳までカートゥーンキャラに切り替えないと、なかなか解けないかも!?

 本作はポイントクリック型のアドベンチャーとして考えると、そこまで難解な謎や複雑なフラグはありません。しかし、人によってはかなり頭を悩ませたり、詰まったりする可能性もあります。なぜなら、パズルの解答自体がシュールなカートゥーンだから。

  • ▲謎解きで詰まったら、なんとなくこうするとカートゥーンっぽいオチになりそう……と考えることが重要。

 通常のポイントクリック型ゲームであれば、常識の範疇で「ここをクリックしたら、こういう反応をするだろう。つまり、正解はココだ!」と予測がつくものなのですが、なにせ本作はカートゥーン。普通の答えじゃありません。思っていたのと違う動きで、常識的な感覚とは全然違う答えが飛び出したり、思っていたよりも派手な展開になることもしばしば。

 自分自身がカートゥーンの登場人物になった気持ちで挑まないと、何が何だかわからず解けない場面も出てくるでしょう。私から言えることは、考え事をしているキャラクターの頭にあるモヤモヤが掴めたり、自分自身の形が変わったりと、お約束のコメディ描写が謎を解くカギとなっています。カートゥーン脳じゃないと悩むと思うので、困ったら思ってもいない部分をクリックしてみてください。自分の頭をぐにゃんぐにゃんのタコになるくらい柔らかくして、発想を変えて考えましょう。

  • ▲とくに、ミスター・クーのパーツがバラバラになったあとのステージが本番と言える難易度。二転三転する正解なのかわからない展開に悩みまくり!

 なお、画面に落ちているヒントの本を開くと、ヒントが表示される機能もあります。ただし、ヒントがあると言ってもあくまでそのシーンの導入部分のみ。最も考えて悩みそうなパズルにはヒントがないんですよね……。

 むしろ、いっさい使わないくらいの「もっと、先を教えてくれ~!」となるヒントであまり頼りにはなりませんでしたね。やはり、モノを言うのは自分の発想力でしょう。その代わり、正解すれば高品質なカートゥーン・アニメの続きが見られます。アニメのごほうびを見るために、不可思議なパズルを解く。これも、ほかでは得難い体験ですね。なかなか変わったポイントクリック型アドベンチャーですよ。

  • ▲んん? あれ? ここに乗って、あいつがアレで……と考えてクリックするのは頭を使いますが、正解すればシュールな動きにクスっときちゃいます。

 おそらく、このジャンルのアドベンチャーが得意な人でも、腕を組んで悩む場面はあるはず。カートゥーンならではのシュールな謎解きが多く、解答自体にオリジナリティがあります。パズル好きの人も「その発想はなかった!」とうならされそうです。

 もっとも、謎自体はわかってしまえば簡単です。最終的には、画面をいろいろとクリックしていれば正解にたどり着けるか、正しいやり方に気が付くと思います。ボリューム的にも、悩む時間を含めて10時間はかからずに遊びきれるのではないでしょうか。

  • ▲クリア後は、ステージ内に隠された制作中のラフを収集できるやり込み要素も存在。まとめて置かれた序盤はともかく、終盤は隠し方がいじわるなものも。

 肩の力を抜いて、新作のカートゥーン・アニメを見る感覚で楽しめる本作。アドベンチャーなのでネタバレをしても意味がないですし、シュールな世界をそのまま文章で書いても伝わらないと思います。「巨大な手にピンと弾かれたら、劇場みたいな場所について大きな山を登りました」みたいに書かれても何がなんだかわからないでしょう?
 
 不思議なシチュエーションや奇想天外な場面を、動きまくるキャラクターや演出で見せる。そういった往年の黄金時代カートゥーン・アニメの楽しさに、先が予測できないジャンルの特性を利用したポイントクリック型アドベンチャーを融合した唯一無二の作風。本作は、アニメを見て触って、アニメの世界にちょっとだけ介入して展開を動かす。そういったタイプのゲームです。だからこそ、実際に動いているところを見ずにレビューだけ読んでも、今一つこの魅力は伝わらないでしょう。変わったゲームなので、興味がある人はぜひ自分の目で確かめてみてください。

The Many Pieces of Mr. Coo (c) 2022 Developed by Gammera Nest S.L. under PlayStation Talents Program of Sony Interactive Entertainment Espana, S.A.U.Published 2022 by Gammera Nest. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved

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